裏話。
実はこのテーマ、第10回ひじき祭用に準備していたんですよね。
ただ第10回の時は日焼け止めにしました。理由はギャル六花ちゃんの立ち絵を使いたかったからです。
「ドーピングは第11回でやればいい」という事で、翌年に持ち越して動画の製作を進めていたのですが、25年の5月にこちらのニュースが飛び込んできました。
・テレ東BIZ「薬物容認大会 2026年5月に初開催 米ラスベガスで」(2026.9.8最終閲覧)
「Enhanced Games」という、ドーピングOKな大会の開催されるとの事。
ちょっとマジで勘弁して欲しい。
何で私の投稿しようとするテーマは毎回毎回炎上案件になるんですか?
こんな地雷原でタップダンスする趣味なんてないので、「大会が開催されてからその結果を見て動画にしよう」と言う事で第11回は急遽別の動画になりました。
| 諸事情(24年立ち絵使いたい/25年 Enhanced Games) |
そして2026年5月、大会が開催。
結果として勝ったのは、ドーピングを使用していない「クリーンな選手」が大半でした。
50m自由形水泳では世界記録の更新(公式記録にはならない)がされたものの、ドーピングの結果と言うよりは通常の大会で禁止されている「高速水着」を着用出来た事の影響が大きいのではとの指摘があります。
また更新されたタイム(20秒81)と従来世界記録(20秒88)の差はわずか0.07秒のみで、従来の世界記録保持者本人が「マジかよ?!それだけか!」とSNSでコメントしたそうです。
・The Guardian「 ‘Seriously?! That’s all you got!’ – Cam McEvoy makes dig at Enhanced Games performances」(2026.9.8最終閲覧)
加えて、競泳男子100メートル自由形で世界選手権を2連覇した経験を持つジェームズ・マグヌッセン(35歳、オーストラリア)選手はこの大会の50mと100mで最下位に終わっています。筋肉をつけすぎた結果、水中での動きが遅くなったのが原因だそうです。
・ABCニュース「James Magnussen flops at Enhanced Games, finishes last in 100m and 50m freestyle」(2026.9.8最終閲覧)
と言う事で、懸念されていたほどのドーピング無双は起こりませんでした。
自己ベストを更新した選手は十数人いたため、「自分の限界を超える」という意味では一定の効果があったようです。また、サプリメントのD2C販売などを目的とした“広告塔”としては、ビジネス的に一定の成果をあげたという評価もあります。
ですがスポーツの根底を覆すような結果にはならず、「これなら解説内容に大きな影響でないな、ヨシッ!」って事で今年投稿する事にしました。
なお、どうやら来年も開催されるらしいです。
今大会は「筋肉をつけすぎて最下位になった」事例があるように、ドーピングが最適化されていない状態での大会です。今後競技種目に合わせてドーピングが最適化されたら結果が変わってくるかもしれません、と言う事で引き続き注視はしていきます。
というわけで裏話でした。
参考文献
全般&動画時間02:00~10:00
- 公共社団法人日本アンチ・ドーピング機構.公認スポーツファーマシスト認定プログラム.株式会社エヌ・ビー・ディー
- 世界アンチ・ドーピング機構(WADA). 世界アンチ・ドーピング規程(World Anti-Doping Code 2021). 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)訳, 2020年12月発行(2021年1月1日発行)
- 日本大学アンチ・ドーピングプロジェクト. 1. 序論:ドーピングのない社会を目指して:スポーツを愛する人に寄り添う薬剤師.
- 澤野大地. 2. アスリートとアンチ・ドーピング:アスリートとアンチドーピング.
- 進藤大典, 小沼直子. 2. アスリートとアンチ・ドーピング:アンチ・ドーピングに向けてアスリート・アントラージュができること.
- 布袋屋浩. 2. アスリートとアンチ・ドーピング:日本大学スポーツ科学部競技スポーツ学科と「ドーピング論」.
- 矢作忠弘. 4. サプリメントとドーピング:漢方薬、植物サプリメントとドーピング.
- 中島理恵. 4. サプリメントとドーピング:若手アスリートの医薬品・サプリメントの使用実態.
- 榛葉繁紀. 7. ドーピングに対する検査技術:遺伝子ドーピング.
- 張替直輝. 7. ドーピングに対する検査技術:アンチドーピングに対する遺伝子検査の役割.
- 宮本葵, 青山隆彦, 松本宜明. 7. ドーピングに対する検査技術:禁止物質の代謝とその血中濃度推移.
- 製薬協.新しいくすりが開発されるまで
- 植木眞琴. ドーピング検査の現状. 日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会編. キャピラリーガスクロマトグラフィー. 朝倉書店, 1997, (第348回 ガスクロマトグラフィー研究会 特別講演会資料)
- Patocka, J. (2019). Carphedon at the crossroads: A dangerous drug or a promising psychopharmaceutical? Global Journal of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences, 7(2), 555713. https://doi.org/10.19080/GJPPS.2019.07.555713
(カルフェドリンについて)
- 難波謙二. アスリートとアンチ・ドーピング:アンチ・ドーピングの現状~ウエイトリフティング競技を中心に~. 日本大学アンチ・ドーピングプロジェクト.
生物関連(10:00~)
- O’Malley, Gerald F.; O’Malley, Rika. “タンパク質同化ステロイド”. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2023年8月更新. Merck & Co., Inc.
- 日本農芸化学会. “1. 同化と異化”. 農芸化学という学問と社会. 第5章 物質の代謝. 2006.
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院. “LOH症候群(加齢性腺機能低下症)”. 順天堂大学医学部附属順天堂医院 泌尿器科.
- 平野秀秋. “生理学とスポーツ”. スポーツ社会学研究. 2008, vol. 16, p. 37–49. DOI: 10.5987/jjsss.16.37.
- 内田啓子. “低酸素応答におけるHIF”. 日本腎臓学会誌. 2021, vol. 63, no. 8, p. 964–968. DOI: 10.14842/jpnjnephrol.63.8_964.
- 竹越一博. “リキッドバイオプシーを用いた非侵襲的な遺伝子ドーピングの革新的な検出法開発”. 科学研究費助成事業 研究成果報告書. 基盤研究(B), 課題番号20H04062, 2023. 筑波大学.
- Yanazawa, Koki; Sugasawa, Takehito; Aoki, Kai; Nakano, Takuro; Kawakami, Yasushi; Takekoshi, Kazuhiro. “Development of a gene doping detection method to detect overexpressed human follistatin using an adenovirus vector in mice”. PeerJ. 2021, vol. 9, e12285. DOI: 10.7717/peerj.12285.
- 武政徹. “アスリートの薬剤および遺伝子によるドーピングを検出する技術創成のための基盤研究”. 科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書. 基盤研究(A), 課題番号21240062, 2013. 筑波大学.
- Takemasa, T., Yakushiji, N., Kikuchi, D. M., et al. (2012). ”Fundamental study of detection of muscle hypertrophy-oriented gene doping by myostatin knock down using RNA interference.” Journal of Sports Science and Medicine, 11(2), 294–303.
- 鈴木秀典. “ドーピング検査の現状と将来”. 生物試料分析. 2016, vol. 39, no. 2, p. 164–168.
- Leuenberger, Nicolas; Barras, Laura; Nicoli, Raul; Robinson, Neil; Baume, Norbert; Lion, Niels; Barelli, Stefano; Tissot, Jean-Daniel; Saugy, Martial. “Urinary di-(2-ethylhexyl) phthalate metabolites for detecting transfusion of autologous blood stored in plasticizer-free bags”. Transfusion. 2016, vol. 56, no. 3, p. 571–578. DOI: 10.1111/trf.13408.
(要約:自己血輸血を血液バッグ由来の可塑剤DEHPの尿中代謝物から検出する) - Sugasawa, Takehito; Kanki, Yasuharu; Komine, Ritsuko; Watanabe, Koichi; Takekoshi, Kazuhiro. “Identification of RNA Markers in Red Blood Cells for Doping Control in Autologous Blood Transfusion”. Genes. 2022, vol. 13, no. 7, 1255. DOI: 10.3390/genes13071255.
(要約:保存した自己血では赤血球内RNAの発現状態が変化するため、RNAを自己血輸血ドーピングの検出マーカーとして利用できる可能性がある)
化学部分(22:00~)
- 宮本葵, 青山隆彦, 松本宜明. “ドーピングに対する検査技術:禁止物質の代謝とその血中濃度推移”. 日本大学アンチ・ドーピングプロジェクト.
- 日本分析化学会 編, 中村洋 監修. LC/MS、LC/MS/MSの基礎と応用. 東京, オーム社, 2014, 272p. ISBN 978-4-274-21641-1.
- 株式会社島津製作所. “1.1. LC-MSとは”. LCMS分析基礎. 島津製作所.
- 株式会社島津製作所. “3.2. トリプル四重極質量分析計の測定モード”. LCMS分析基礎. 島津製作所.
- Bamba-Lab."三連四重極型質量分析".
- 株式会社DNP科学分析センター. “MSとMS/MSの違いについて”. 株式会社DNP科学分析センター.
- 中村洋. “2021年度 CERI クロマトグラフィー分析賞”. ぶんせき. 2021, no. 11, p. 686–687. 日本分析化学会.
疫学部分(28:10~)
- World Anti-Doping Agency (WADA). 2023 Anti-Doping Testing Figures Report. 2025-06.
- World Anti-Doping Agency (WADA). 2024 Anti-Doping Testing Figures Report. 2025-12.
- 今西孝至, 川端崇義, 髙山明. “日本アンチ・ドーピング機構のドーピング防止規律パネル決定報告を基にした日本のドーピングの現状及び今後の薬剤師によるアンチ・ドーピング活動に対する考察”. YAKUGAKU ZASSHI. 2017, vol. 137, no. 7, p. 883–891. DOI: 10.1248/yakushi.16-00260.
- 浅川伸. “わが国におけるドーピング違反事例の実情と対策”. YAKUGAKU ZASSHI. 2011, vol. 131, no. 12, p. 1755–1756. DOI: 10.1248/yakushi.131.1755.
- 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構. “厳格責任の原則”. JADAクリーンスポーツ・アスリートサイト.
- 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構. “2017-004事件 カヌー競技:同意に基づく決定書”. 2017-12-25, 第17回JADA発第076号.
- 日本経済新聞社. “カヌー選手、禁止薬物混入事件の背景にあるもの”. 日本経済新聞. 2018-01-09.(上の事件についてのニュース)
- 公益財団法人全日本剣道連盟. “他者への薬物混入によるドーピング違反(コラム22)”. 全日本剣道連盟 アンチ・ドーピング. 2018.(上の事件を取り扱ったコラム)
アンチ・ドーピング活動の実態(33:22~)
- 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構. “TUE申請の流れ”. 医療関係者向け TUE手続き確認サイト.
- 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構. “TUE申請を準備・申請する(国内レベルアスリート)”. JADAクリーンスポーツ・アスリートサイト.
- Global Drug Reference Online.
- スポーツファーマシストへのご相談
- 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構 国内のアンチ・ドーピング規則違反及びその他の違反 “日本アンチ・ドーピング規律パネル決定(理由書):2019-001事件”. 2019-10-31.
本来は原則4年の出場停止ですが、競技者が「意図的な摂取ではなかった」ことを立証したため4年→2年になっています。
理由をとしては

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